はじめに
皆さん、海外出張って経験ありますか?
海外の空港に到着した際、必ず通過するイミグレーション(出入国管理)。
自国のレーンは空いているのに外国人レーンには大行列。なかなか進まず到着してから入国審査までに長い時間、待たされる経験ってありませんか?
気が付けば先ほどまで乗っていた飛行機のパイロットやCAさんが後から来て、特別なレーンで追い抜かされるシーンを何度見た事か!!
このような行列が無い、日本の出入国管理って本当に凄いと感心するばかり。
海外出張なんだから仕方ない!って諦めていませんか?
どんなに仕事ができる方でもこの待ち時間は何も生まない時間の無駄です。
実は海外出張でこのような悩みがある方は事前申請するだけでAPECに加盟する21カ国で特別なレーンを利用してスムーズな出入国審査が利用可能なんです。
今回は海外出張が多い方に絶対に知っていて欲しい「APEC・ビジネス・トラベラーズ・カード(ABTC)」について記事にしたいと思います。
- はじめに
- APEC・ビジネス・トラベル・カード(ABTC)とは
- ABTC取得の4条件
- ABTCレーンが利用できる空港と最大滞在日数
- ABTCの使い方
- 申請はどのくらい手間か?
- ABTC利用時の注意点
- まとめ
APEC・ビジネス・トラベル・カード(ABTC)とは
APEC域内を頻繁に出張するビジネス関係者の移動を円滑にするために,制度参加国・地域の政府が自国・地域のビジネス関係者に発行する特別なカードです。
少し言い回しが難しいのでわかりやすくメリットを紹介させていただいます。
ABTCのメリット
ABTC(APEC・ビジネス・トラベラーズ・カード)の最大のメリットは以下のようなものがあります。
- APEC加盟国であれば査証(ビザ)が不要
- 主要な国際空港に設置したABTC専用レーン(入国審査ブース)を利用することができ,円滑な審査が受けられます
このメリット「2」こそが長年、海外の入国審査で長時間、待たされるという悩みを解決できる最強のメリットなんです
これはビジネスクラスを利用しようがANAやJALなど航空会社の上級会員になっても回避する事ができない問題でした。(一部、特別レーンあり)
しかしABTC(APEC・ビジネス・トラベラーズ・カード)を取得することでこの問題を一発解決できるんです。
APEC加盟国
最強の入国方法、ABTC専用レーン(入国審査ブース)が利用できるのはAPECに加盟している21の国・地域。
参考:APEC第19回非公式首脳会議 -- pekinshuho
さらにこの中で19の国・地域では査証(ビザ)も不要です。
残りのアメリカとカナダは暫定参加メンバーとなるため、査証(ビザ)は必要です
アメリカとカナダは含まれませんが何度も査証(ビザ)が必要な国に出張するサラリーマンにはとてもメリットがありますよね。
- オーストラリア
- ブルネイ
- チリ
- 中国
- 中国香港
- インドネシア
- 日本
- 韓国
- マレーシア
- メキシコ
- ニュージーランド
- パプアニューギニア
- ペルー
- フィリピン
- ロシア
- シンガポール
- チャイニーズ・タイペイ
- タイ
- ベトナム
- アメリカ
- カナダ
私の場合、中国、韓国、台湾への出張が多いので利用するの国は限られていますが。。
※注意:査証(ビザ)に関して
外務省のHPは「ABTC取得で査証でなしで入国審査を受けれます」との記載がありますが訪問する国や訪問目的により別途、査証を要求される国がありますので訪問前にご注意をお願い致します。
例)
中国では打ち合わせは査証(ビザ)が不要。
中国内で購入機器のメンテンンスには査証(ビザ)が必要。
上記の理由より私はABTCは取得しましたが中国でメンテナンス作業作業するために査証も取得しています。
暫定参加のアメリとカナダのメリットは?
査証(ビザ)の申請は必要ですが暫定参加メンバーのアメリとカナダでもABTC専用レーンを利用してスムーズな入国審査を受けることは可能です。
ABTC取得の4条件
以下の1~3に関しては、ほとんどの方が条件を満たしていると思います。
また4に関しても仕事で海外出張経験者であれば該当する仕事をされているはずなので条件を満たしているはずです。
- 有効な日本のパスポートを持っていること
- 申請書、提出書類に虚偽が無いこと
- 犯罪歴が無いこと
- 過去1年間、貿易又は海外投資を行った会社の経営者または雇用者
※上記では4について簡単に説明していますが外務省のHPで記載されている正式内容をご紹介いたします。
外務省が定める4条件
- アジア太平洋経済協力ビジネス諮問委員会の日本委員、日本委員代理又は日本委員を補佐する業務に従事する者
- 過去一年間、貿易又は海外投資を行った実績を有する機関の経営者若しくは当該機関に雇用された者又は当該機関と貿易等に関する事業を実施する上で必要となる業務上の提携を行っている機関の経営者若しくは当該機関に雇用された者であって、参加国等において貿易等に関する事業を行うことを目的として参加国等に渡航し、かつ、今後同様に渡航することが必要であると認められる者
- アジア太平洋経済協力ビジネス諮問委員会日本支援協議会の構成団体の職員又はその団体の会員である機関の経営者又は当該機関に雇用された者で、貿易等に関する事業を行うことを目的として参加国等への渡航が必要であると認められる者
- 貿易等に関する事業を行う機関の経営者又は当該機関に雇用された者で、貿易等に関する事業のうち特に災害復興に資すると認められるものを行うことを目的として参加国等に渡航し、かつ、今後同様に渡航することが必要であると認められる者
記載内容が難しい表現となっていますがお仕事で海外出張に行かれている方であれば基本、全員が該当します。(つまり観光でのみで海外に行く方は該当しません。)
これまでの説明でお気づきかと思いますが外務省が定める4条件ははっきり言って
ハードルがメチャクチャ低く多くの方が申請可能なんです!
あとは少し手間をかけて申請するかどうかです。有効期限も5年と長く一度、申請してしまえば当分は何もしなくてOK
ABTC申請方法
以下の1~8を準備して外務省に郵送するだけ
- 申請書
- 顔写真2枚(45mm×35mm)
- 旅券写し(顔写真及び身分事項が記載ページ)
- 在職証明書(勤務先に依頼)
- 登記事項証明書(注1)
- 貿易、投資の実績を示す文章(決算書、損益計算書の写し)(注2)
- 会社パンフレット(会社のHPアドレスでも可)
- 返信用定型封筒(402円切手を貼付)
- 収入印紙(13,100円)
会社により多少、ルールが異なると思いますが「4」の在籍証明書は使用目的を説明し、会社の人財部へ依頼すれば1~2週間で発行可能です。
(注1)
所属企業が「四季報」などからその存在が確認できる場合は,提出の必要はありませんが「四季報」など所属企業の存在を示す資料の写しを送付する必要があります
(注2)
日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会の職員又は雇用者は提出不要ですので申請のハードルが格段に下がります。
また日本の上場企業にお勤めの方も入手は簡単なのでお勧めです。
非公開企業や外資系企業のお勤めの方は入手が難しいため、申請のハードルがかなりあがります。
【郵送先】
〒100-8919 東京都千代田区霞が関2-2-1
外務省経済局アジア太平洋経済協力室
「APEC・ビジネス・トラベル・カード」ABTC班
電子メール:abtc@mofa.go.jp
FAX:03-5501-8340
申請後の流れ
必要書類を郵送した後は待つだけです。
私の場合、2018年12月上旬に申請して、受け取ったのが2019年4月中旬と約4か月ほどもかかりました。
ABTCのメリット知ってから申請していたので本当に待ち遠しかったです。
なぜこれほどの時間がかかるのか?
それは加盟しているすべての国から承認が必要なためです。
これほど申請期間が長いとちゃんと申請ができているか心配になり、途中で申請の進捗を確認したいですよね。
実は私も途中で心配になったので途中で調べました。その確認方法を記載します。
ABTC申請審査状況確認方法
-
外務省のABTCシステムにアクセス
-
申請国・地域選択タブから「Japan」を選択
-
旅券番号の入力
-
画面右上の「Search」をクリック
-
承認されている国が表示
※上記申請審査状況が確認できるまでに郵送後、約2ヶ月程度かかりますので焦らずにお待ちください。
ABTCレーンが利用できる空港と最大滞在日数
実はこれまでに説明しましたABTCで利用できる優先レーンですがAPEC加盟国であってもすべての国内空港で利用ができません。
利用できるのは以下の空港のみとなっています。(2019年5月情報)
日本外務省のHPには利用可能な空港情報の記載が無かったため、最新情報については以下のカナダイミグレーションHPを参考ください。
https://canada-immigration-info.ca/apec_business_travel.htm
ABTCの使い方
イミグレーション前には一般レーンとは別に「APEC」と記載された看板がありますので案内の通り、特別レーンに並ぶだけです。
と言っても誰もいなくて不安になりますがABTCを持っていれば、問題ありません。
あとは通常のイミグレーション(出入庫審査)と同様にパスポートとABTCを提出するだけです。
以上
申請はどのくらい手間か?
時間で計算すると在籍証明書を会社に依頼して受け取るのに1~2週間ほどかかりましたが実際にかかった手間は外務省のHPから申請書類を印刷し、記入して封筒を準備するのに1時間程度。
記入例もありましたので特に迷うこともありません。
ちなみみに記載内容に不備がある場合でも外務省からメールで親切な内容で修正依頼がありますので心配もありません。
実は調べてみると各国のVISA取得同様に代行業者もありますが手続きは非常に簡単ですのでご自身で申請されることをお勧めします。
ABTC利用時の注意点
非常に便利なABTCですが使用用途が「商談」「業務連絡」「市場調査」「投資目的のための契約締結」「報酬を伴わないアフターサービス」に限られています。
魅力的な国が多く、観光などで訪問したときにも利用したと思いますが本来の用途と異なる目的で使用した場合、地域の国内法令で処罰される可能性があるのでご注意ください。
ABTCはAPEC域内の貿易及び投資の円滑化に寄与することを目的とした制度であるため,ABTCを用いてABTC制度参加国等に入国・入域した場合に許される活動は,短期間行われる収入又は報酬を伴わない活動であって,商談,業務連絡,市場調査,投資のための契約締結,納品後の報酬を伴わないアフターサービス等に限定されています。
短期商用以外の渡航目的(観光など)での使用は想定されておらず,また,収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行う場合には,一般に就労ビザが必要となるほか,かかる事態が判明した場合には,当該参加国・地域の国内法令に従い処罰される可能性があるほか,ABTCの失効手続を執らせていただくことになりますので,十分御注意願います。
APECビジネス・トラベル・カード(ABTC)Q&A | 外務省
まとめ
- アジアに海外出張がある人はABTCを迷わず申請
- ABTCの申請には会社の協力も必要
- ABTCがあれば入国審査がスムーズ
- 航空会社の上級会員と合わせれば最強の海外出張
- 査証については事前に確認しましょう